六畳の独房、五畳の惑星

 

二月に部屋の契約が切れるので、それを機に引っ越そうと思っている。この部屋で初めて一人で暮らし始めて二年が経つということだ。今日は内見に行って、新しい部屋を決めてきた。なんでも始めてしまえばすぐなもんだなぁ。

 

住みたかった街。家賃六万。風呂トイレ別。ベランダがあって、新宿方面が一望できる。ペット可。フルリフォーム。国道沿い。これ以上の物件はないと思って一発で決めた。ただめちゃくちゃに狭い。居間はキッチンを含めて五畳。収納もほとんど皆無。

 

今の部屋もかなり気に入っている。家賃四万五千。六畳1K。壁一面に収納。日当り良好。すぐそばにドンキ。徒歩10分におばあちゃんの家。家の前の道からは、遠くだがまっすぐにスカイツリーが見える。国道沿い。

 

それでも時折襲ってくるあの虚しさや寂しさはなんだったのだろう。いつからかぼくは一人で暮らすこの部屋を独房と呼んでいた。ぼく一人で暮らすにはちょっとだけ広くて、友達が遊びに来るぐらいでちょうどいい広さだった。単身者限定の部屋だったが、この部屋は、ぼく以外の誰かがいることで、初めて独房から部屋になれるのだなと思った。

 

引っ越しても虚しさ寂しさはやってくるだろうけど。今のぼくにはそれを乗り越える力が前よりも少しだけある。

 

最近になって、この広さにも少し慣れてきていた。寂しさに任せてものをたくさん買ってしまったが、今度は少し減らさなければならない。

 

この部屋で、ぼくは多分いっぱい成長する。惑星のような五畳に、荷物はあまり持たず、いっぱいの夢を持って行くんだ。

 

たぶんベッドも置けないけれど、その広さが今のぼくにはきっとちょうどいい。直感でそう思った。それで少し狭いなと感じるようになったら、ロケットを作って、恒星に引っ越そう。